本日は、朝から、角打ちをした。つまり、立ち飲み。
煙草屋は米屋でもある、酒屋でもある。
純米酒、100ミリリットルくらいかな? 150円
イカフライ 50円
合計200円の贅沢です。
タバコは高いな~。ワンカートン4600円。
タバコ屋に行ったら、赤霧島があったので、買った。一升2400円
元来は米屋さん。
このご時世。多角経営である。
灯油の販売、クロネコの配達、クリーニングの受付などもやっている。
「角打ち(かくうち)」という言葉は、「広辞苑」(岩波書店)、「日本語大辞典」(講談社)には載っていない。
「日本国語大辞典」(小学館)には、「酒を升にはいったまま飲むこと」。方言として、「升で酒を飲むこと、酒屋の店頭で酒を飲むこと、金銭を出し集めて宴をすること」とある。
北九州では、「酒屋の店頭で酒を飲むこと」を「角打ち」と言う。もともと、秤り売り用の酒を、升を借りて縁に乗せた塩をアテに、その場で立ち飲みしていたものであろう。
酒屋のカウンターで立ち飲みをすることを「角打ち」と言わない地方もある。関西では、酒屋で飲むのは、「立ち呑み」、立ち飲み屋で飲むのは「立ち飲み」らしい。東北では、「もっきり」とも。九州と関東は、酒屋で飲むことを「角打ち」と言うところが多いようである。
ところで、酒屋は酒を販売するところであり、飲ませるところではない。飲ませるところは飲み屋であって酒屋ではない。最近流行のオシャレな「角打ち屋」や「角打ちバー」は飲み屋である。駅の近くにある「立ち飲み」も飲み屋である。北九州で言う角打ちとは、飲み屋ではなく酒屋で立ち飲みすることである。
酒の飲み方はいろいろある。懐具合や気分、時宜などによって安酒屋から高級料亭まで様々な場所や酒類を選んで飲むことができる。その中でなぜ敢えて「角打ち」なのか。「酒屋で飲むこたぁなかろ~もん。なしか!」
酒屋は酒を売るのが商売であるから、酒を買ってくれる人はお客である。しかし、そこで立ち飲みし始めた人はお客ではないはずだ。飲んでいる人にサービスをする必要はないし、サービスすれば違法である。
「角打ち」に飲食業者のサービスを求めてはいけない。そういうサービスが必要なら「飲み屋」で飲もう。笑顔も愛想もいっぱいあるし、食べ物だっておいしいものがたくさんある。飲み屋でしてもらえるサービスがなくても飲むのが「角打ち」である。いや、それがないのがよくて飲むのが「角打ち」かもしれない。
「角打ち」は、正規のルートで入ってきた酒を安価に飲める。500円玉があれば、日本酒200ml(250円前後)とつまみでおつりがくる。これは、酒屋で飲むのだから当然と言えば当然である。
「角打ち」には、飲み方の自由さがある。仕事帰りに気の合った仲間と一緒に来て軽く一杯やるのも、ひとり来て店主や常連客と軽口を叩きながら飲むのもいい。カウンターの隅でひとり黙って飲むのがいい時もある。冬の寒い時、乗り物待ちの3分間で身体を暖めることもできるし、乗り遅れた時間を分単位で調整するにもいい。また、本格的に飲みに行く前のウォーミングアップにもなる。
カウンターの前に立ち、飲んで、勘定して出て行くまで10秒とかからなかった角打ちを目撃したこともある。
「角打ち」をやっている酒屋の中には、昭和の雰囲気をたっぷり残しているところがある。高い天井に残る剥き出しの電気配線や碍子、レンガを敷き詰めた土間、分厚い一枚板のカウンター、大きな柱にかかっている振り子の古時計、量り売りに使われていた陶器の4斗樽や升・・・
そんな雰囲気の中で、話し好きの店主にその店やその地域の歴史などよもやま話を聞きながら飲む酒は格別である。
角打ちは、庶民の文化である。角打ち屋の敷居が高く感じられたとしたら、それは、私たちが庶民のこころを忘れてしまったからだと言っては言い過ぎであろうか。
慣れないうちは、ひとりで角打ちに行くのは勇気がいるものだ。昼間から飲んでるおっさんたちがいる酒屋で立ち飲みするわけだから女性ならずとも男性でさえ入りづらいものである。
しかし、よく考えてみるとこれほど安全なところはない。角打ちをやっているところは、その地域で何代かにわたって商売をしている店が多い。どこの誰かわからない人間が経営していて開店閉店を繰り返している飲み屋とは違う。また、明朗会計この上はない。怪しい飲み屋と違って、身ぐるみ剥がされて・・・ということはありえない。千円札1、2枚あれば飲みすぎるくらい飲めるのである。
角打ち店は、店にによってそれぞれの特色がある。気の荒そうな職人さんたちがいっぱいのところもあれば、ネクタイを締めたサラリーマンが多いところもある。結構愛想良く新参者を迎えてくれる店もあるし、新参者であろうが常連客であろうがお構いなしに適当にあしらう店もある。乾き物(袋入りの豆類など)しかつまみ類がない店もあれば、飲食業の許可を取っていて刺身から煮物・揚げ物・焼き物まで全て揃っているところもある。
角打ちへの第一歩は、「角打ちは店それぞれにやりかたがある」ということを知ることである。つまり、それぞれの店がそれぞれの「角打ち文化」を持っているのである。その「文化」を理解するには、よく観察する、店の人と話してみる、他の客と話せる雰囲気であれば声をかけてみることである。
■角打ち初体験の手順
1.酒屋の前で、角打ちができる店かどうかを確かめる。
(夕方、店内に灯りがついた頃が確認しやすい。カウンターがあって客が飲んでいればOK。)
2.飲んでいる客を見て、同じカウンターで飲めるかどうかを判断し、OKなら店に入る。
3.カウンターの前に立ち、「日本酒をコップで」と言う。 *注
4.出てきたコップ酒を飲みながら周りをじっくり観察する。
5.つまみなどの注文の仕方は、他の客を見習う。
6.あまり長居せずに勘定を済ませ、店を出る。
注)別に日本酒でなくてもいいのであるが、ビールの注文の仕方は、店によって異なる。勝手に冷蔵庫から缶ビールを取り出して、「コップ貸して」という方法のところもあれば、店の人に「サッポロ中瓶」などと言って注文する店もある。他の客がどうしているかを観察して見習うとよい。つまみの注文の仕方も同じである。
角打ちの流儀は、角打ちをする人の数だけある。「角打ちは~べきである」というのはその人個人の流儀であってすべてではない。「角打ちはひとりで行くものである」、「角打ち店では他の客に話しかけてはいけない」、「角打ちは10分以内にとどめるべきである」、「角打ちは日本酒ですべきだ」・・・・それぞれ結構なことである。それぞれが、自分が「粋」だと思う飲み方で飲めばいい。そんなことすら考えないで飲んだっていいはずである。
角打ちの流儀は、角打ちをする側だけでなく、角打ち屋さんやそこに集まってきている人たちの側にもある。自分の側の流儀だけを振りかざして角打ちをしてもまずいのである。自分の流儀と同じ流儀の角打ちができる店を探して角打ちをするのも、自分の流儀とは違う流儀の角打ちがされている店で「異文化角打ち」を楽しむのもいい。
また、旨い酒を飲むとき、楽しい酒を飲むとき、哀しい酒を飲むとき、それぞれに違った流儀があってもいいではないか。
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